第7回
「トランシーバー」

(2005年8月29日)


 クラフトフェルトで初めてトランシーバーが戦闘に投入されたのは、1994年の夏頃だったと思う。初代の隊長がなんと人数分買い揃えて持って来たのだ。2回ほど使った様に思う。結果はどうだったかというと、やたら喋りまくって戦闘がお留守になったり、自動送話で「フーフー、ハァハァ」と延々あえぎ声を聞かされたりで、ロクなもんではなかった。ロクなもんじゃなかったから、そのまま定着せず、長い間忘れ去られる事になった。

 クラフトフェルトでトランシーバーの制式が決まるのは、2000年の事。二四時間戦でトランシーバーを介した指揮が取られる様になったからだ。クラフトフェルト制式無線機は、アイコムのIC-4008Wになった。これは当時、マリーンで同じ匡体を使うIC-4008Mが採用されたのを真似たのだ。

 一丁前に制式無線機を決めたまでは良かったものの、実際に使うのは年一度の二四時間戦の時だけで、普段の部活では使わなかった。なぜか? その原因は自分にあった。

 トランシーバーを装備する方法として、クラフトフェルトではトランシーバーはコンパスポーチに入れて装具に付け、イヤホンマイクを使って受話する方法をとっている。ところが自分は脂耳で、どんなイヤホンマイクを使っても耳から外れそうになる。実際に外れてしまう訳ではないのだが、いつ外れるか気が気でなくて戦闘に集中出来ない。ついでに言うと、トランシーバーにつながっているコードも邪魔だし、PTTスイッチを探して胸元をまさぐるのも面倒くさい。その様な訳で、二四時間戦ではトランシーバーを直に持って指揮を取っている。でも、そういうスタイルでトランシーバーを使えるのは二四時間戦の様な軽装で指揮に専念できる時だけで、完全軍装の定例会では出来ない。だから今までは、普段は邪魔くさがってトランシーバーを装備しなかったのだ。隊長がこの体たらくだから、部隊で無線機使用が発展する訳がなく、ただ単に持ってるだけの宝の持ち腐れになっていたのだ。

 そうこうしている内に、最近ではトランシーバーを常用するチームが増えてきた。そこそこ安くて性能の良いトランシーバーが出回った事もあるし、トランシーバーを装備した方が格好いいと思う人も増えたのだろう。特に、組織戦を心がけようとしているチームでは、トランシーバーで戦闘間に各人が意思疎通を図ろうとする傾向が強いらしい。

 クラフトフェルトでは、班単位戦闘は基本的に4人一組で、班長の可視可聴の範囲、つまり口で指図できる範囲以内で展開して戦闘するのが基本になっている関係で、これまで戦闘指揮や意思疎通は、地声でやってきた。「こら〜〜、S上等兵! もっとしゃがまんかー!」みたいな感じである。なんとも泥臭い感じでやってきたのだ。

 まぁ、無線機を使ったからといって、怒鳴らない訳ではないのだが、使うと使わないとでは大違いだとも思うので、せっかく持っているなら、常用してみようかと思う今日このごろである。