ペットボトルロケットの兵器化

 クラフトフェルトでペットボトルロケットの兵器化が始まったのは1999年の事。今も加盟する手賀沼条約機構(TPO)主催の二四時間戦という長時間戦で、段ボール箱で作った「段ボール戦車」を撃破する兵器として、紹介されたのがペットボトルロケットでした。TPOの中核チームであるダイハードクラブ(DHC)では、すでにペットボトルロケットが兵器化されているとかで、非常に関心を持ったのが始まりです。

 ところで、この様なロケット兵器をサバゲーに活かしたいと考える人は、他の地域にもいらっしゃる様で、北陸地方の斬駆郎さんはクラフト技研も賞賛するペットボトルロケット兵器の大家です。このページは、「ソロモンの秘宝館」の中に設けられたP兵器工房をまるっと真似ております。


ペットボトルロケット兵器の基礎知識

<使用する対象>

 ペットボトルロケットはご存じの通り、6ミリのBB弾よりははるかにデカい代物です。普通に考えても、当たれば痛そうです。その様な訳で、ペットボトルロケット弾は対人使用は原則として認められておりません。使用できる対象は段ボール戦車にのみ、従って、段ボール戦車が使われない通常の定例会では、ペットボトルロケット弾は使用できません。
 …と、ここまでは原則的なお話しでして、実際のところはどうかと言いますと、段ボール戦車には歩兵が随伴する事もありますし、戦車を狙ったつもりが兵隊に当たった、などという事もまま考えられる事です。そこで先述の二四時間戦の交戦規定では、「わざと人間を狙わない事。ただし、人間に当たった場合は、一発戦死とする」という規定になっています。いいですね、わざと狙ってはいけないんですよ。


<有効性>

 では、ペットボトルロケットはサバイバルゲームに有効なのか。結論から言いますと、少なくとも通常の弾道飛行をするタイプのペットボトルロケットは、皆目役に立ちません。あえて言おう、「カスであると!」
 なぜかと言いますと、まず照準がききません。曲射する以上は、軍隊で使う迫撃砲を発射するのと同じ観測や照準が必要ですが、そこまで出来る人間がこの世界にはほとんどおりません。仮に出来たとしても、ハンドメイドのロケットだけに生産公差が大きすぎて、まず狙った地点に落ちません。次に、弾道飛行するペットボトルロケット弾はおおむね40〜50m(500mlのボトルを使った場合)飛翔しますが、よほどの開豁地でないと、木とか枝にぶつかってしまいます。この他にも色々理由はありますが、あまり上げ連ねてやる気をなくさせても困りますので、この辺でやめておきます。
 では、どういう使い方をすれば良いかと言いますと、直接照準の平射で使用するのです。この場合、飛距離は曲射の場合よりも極端に短くなりますが、少なくとも「狙って当てれそう」なレベルにまで兵器化が可能です。


<危険性>

 段ボール戦車の中に入っている分には、ペットボトルロケット弾が命中しても、痛くも痒くもありません。というか、当たったのが判らないくらいです(命中した場合は、敵味方問わず、近場の兵隊が教える事になっています)。
 では、人間に当たった場合はどうなのか、実例をご紹介しましょう。

(例1)
 DHCのもっちー将軍が、後装式の平射型ロケット砲を作って持ってきたので、試しに撃ってくれと頼んだところ、暴発して砲口から約50cmの距離で自分のみぞおちにメガヒット。激痛と同時に呼吸困難になり、意識は朦朧、三途の川で敵前上陸する幻想を見る羽目になる。(みんなは大笑い)

(例2)
 クラフトフェルトが投入した曲射型の通常タイプのペットボトルロケットを当てずっぽうに発射してたら、フィールドランナー(現インターメッツォ)のエンザ曹長の肩にミラクルシュート。あやうく外交問題に発展しかける。命中した本人曰く、「いきなり肩がガクーンとなって膝が崩れた」。近くにいた人の証言、「注意しようとしたら、命中してた」

 とまぁ、こういう具合に、結構危険な兵器です。その様な訳で、仮に当たっても大ケガしないように、弾頭にソフトな素材を使用する、狙った目標に確実に命中させれる機能を持たせる、等々の努力が開発者には求められています。

クラフト技研P兵器列伝


<百式噴進弾>(2000年)

 クラフト技研の記念すべきP兵器第一号は、日本ペットボトルクラフト協会(JPCA)が発売しているキットをそのまま組み立てたものでした。初打ち上げは、2000年6月頃。きれいな放物線を描いて飛翔するロケットに魅了され、対戦車用というよりは「陣地砲撃用に使える」と直感して、採用が決定しました。ただし、JPCAのロケットは1.5リットルボトルを使用する大型の物で、飛距離は100m前後。これではフィールドをオーバーしてしまう事と、万が一、人に命中した場合のダメージが半端ではなさそうな事から、500mlのボトルにスケールダウンして採用しました。
 百式噴進弾と命名されたこのロケットは、ダミータンク部に200発のBB弾を装填し、敵陣の上空を超過する際に、BB弾を散布する方法で攻撃する事を想定していました。もちろん、噴進弾が敵陣に落下する事もある訳で、その意味では恐ろしい兵器でした。もちろん、その場合を想定して、ノーズコーンの代わりに、冬季の水道管破裂防止用のウレタンチューブを取り付け、万が一に備えました。この安全具はチューブですので、付けたままでダミータンクにBB弾を流し込めるアイデア品でした。

〔結果〕

 百式噴進弾は、2000年の第3回二四時間戦に投入されましたが、運用する人数が少なかった事(4人は要るのに2人しかいなかった)、射点の回りに木が多く発射直後に枝にぶつかってしまう事、着弾観測も出来ずどこに飛んでいったか判らない事(その1発がエンザ曹長に命中した)、などなど、散々な結果で、クラフト技研のP兵器開発の稚拙さを思う存分現した結果になりました。(写真はイメージです)


<もっちーランチャー>(2000年)

 クラフト技研がP兵器の開発を始めた時、DHCではすでに塩ビ管の後尾からロケットを装填して発射する後装砲の実用化に成功していました。写真は2000年の第3回二四時間戦にDHCのもっちー将軍が投入した、もっちーランチャー。VU65塩ビ管から500mlボトルのロケットを発射します。発射装置はJPCAのキットのワイヤートリガーをそのまま流用しています。自分が至近距離からみぞおちにロケットの直撃を受けたのも、このロケット砲です。


<一式汎用噴進砲>(2001年)

 百式噴進弾が定置式で扱いが悪かった事と、もっちーランチャーが携帯兵器であった事のショックから、クラフト技研でもP兵器の携帯兵器の開発を行う事なりました。
 もっちーランチャーは後装式で無尾翼弾を使用する平射専用のロケット砲でしたが、クラフト技研ではこの種のロケットが射程距離が短い事を嫌い、あくまで曲射で長距離砲撃が行える砲にこだわりました。そこで選んだデザインが、RPG7でした。これならば噴進弾はむき出しですので、有翼弾が使用できます。しかも、連続砲撃可能な様に、砲身が取り外し出来る様になっており、この砲身に発射口と発射装置が組み込まれていました(言い換えれば、砲身から後ろはタダの飾りみたいなもんです)。

〔結果〕

 一式噴進砲は、2001年の第4回二四時間戦に投入されましたが、まず肩に担いで発射するには、曲射の場合、視線は目標を向いているのに砲は上向きという不自然さで、まともに照準できず命中は期待できませんでした。しかし、平射で直接照準した場合、むき出しの有翼弾は発射直後に地面に激突してしまい、まったく飛翔しませんでした。
 結果、噴進砲は比較的至近距離で、直接照準で平射するのが、もっとも多い用途である事がわかり、その意味で百式噴進弾も一式噴進砲も役立たずである事がはっきりしました。


<二式噴進砲>(2002年)

 前装式の曲射砲による長距離砲撃の夢をばっさり諦めて、クラフト技研でも後装式平射砲の開発を行う事になりました。要求仕様として、一人でも運用可能な事、直接照準で最低15mの飛距離がある事、連続砲撃が可能な事、の3点でした。
 後装砲の特徴は、発射口が引き金よりも後方に位置している事で、従来のワイヤートリガーを使う場合は、ワイヤーが砲尾から前方の引き金まで伸びてデザイン的にも悪く、またワイヤーに草や枝が引っかかって使いにくそう、という欠点がありました。二式噴進砲では、この発射装置をステー式に代える事で解決し、かつ発射口を内蔵した砲尾を交換できる様にして、連続発射を可能にしました。

〔結果〕

 二式噴進砲は2002年の第5回、2003年の第6回の二四時間戦に投入されましたが、期待を込めた噴進砲を砲入した時に限って、敵軍が戦車を用意しておらず、明確な戦火をあげていません。ただ、この種の噴進砲は連続発射よりもヒット・エンド・ランの方が向いている事(すなわち、当たっても当たらなくても1発撃ったら逃げなければならない)、訓練の行き届いてない者でも簡単に撃てる方が良い事など、運用面での反省がありました。


<簡易噴進砲>(2002年)

 二式噴進砲の砲身と砲尾だけの砲で、より数多く噴進砲を配備する為に急造しました。撃ち方は脇に抱えて発射するのが基本でしたが、使う人の好きずきに撃ってもらう事にしていました。

〔結果〕

 この砲も2002年の第5回二四時間戦に投入されました。二式噴進砲よりも簡単に扱える砲として生産されましたが、現場で初めて渡された人では、どこをどう押せは発射できるかも判らない状態で、全然使ってもらえませんでした。


<圧搾注入器>(2002年)

 これまでのP兵器開発で、砲以上に成功を収めたのが、このリキッドチャージャーです。これまでロケットへの空気の注入は、自転車のタイヤの空気ポンプを使っていましたが、これを使った空気注入は物凄い重労働で、時間も掛かる作業でした。にも関わらず、注入したロケットは長時間置いておくと、空気圧が落ちて発射不能の可能性があったため、発射直前に重労働を行わねばなりませんでした。
 この圧搾注入器は、グリーンガスのボンベにサンプロのレギュレータをつけ、チューブの先端には自動車のタイヤの注入器を付けています。この注入器はラジオバッグに入れられ、どこでも持ち運びが出来、ロケットの発射直前にガスを注入する事が出来ます。


<カンプピストル>(2002年)

 これは隊の制式兵器として作ったものではなく、お遊びで作った物です。前装式でしかもチビレモンのボトルでは、ほとんどまともに飛ばないのですが、無いよりマシの自衛用として作りましたが、実際には使いませんでした。

P兵器研究報告

<後装砲実験>

 写真は、後装砲の弾道実験の様子です。後装砲は塩ビ管の後尾からロケットを装填する関係で、尾翼を付ける事が出来ません。また、むき出しの状態で発射すると、直後に地面に激突して飛翔しません。そこで、塩ビ管で一定の指向性を付ける事で、水平発射を可能にしますが、飛距離は格段と落ちてしまいます。そこで、ロケットの重心を前に来るようにダミータンクの長さやそれに付ける安全具などを工夫し、かつ砲を軽く仰角をつけて発射する事で、命中精度と飛距離を改善する事に成功しました。


<発射装置の後座の仕方>

 ペットボトルロケットは、発射口に取り付けたリモコンリングをワイヤーで引っ張る事で、発射口が下がってロケットが発射される仕組みになっています。引き金が発射口の後方に位置する前装式の場合は、このワイヤーがそのまま使えますが、引き金が発射口の前方に位置する後装式の場合は、砲尾からワイヤーを引き金まで回さねばならず、デザイン的にも不細工な上に、砲弾もワイヤー付きの砲尾ごと交換せねばならず運用が大変です。
 そこでクラフト技研が開発したのは、金属棒のステーで発射口を押し下げる方式でした。発射口には、リモコンリングの代わりに発射口を押し下げる為の板が付けられており、この板を引き金と一体になったステーが押し下げます。このステーは発射口に連結されていないので、砲尾の交換も用意に行えます。


まだまだ続くかも


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