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美味しいご飯とは何か

 炊きたての飯の香りをいつくしみ、そのまろやかな舌ざわりと、あるかなきかのうま味を一生の友としてきた人びとも、少なくなってきたとはいいながら、その繊細微妙な米飯の風味というものを尊んできたのである。

大塚力『食における日本の近代化』(国際連合大学 1982年)

 

 「美味しい」と「感じる」事は、個々人の味覚や感性によるところが大であって、何をもってして、また数値的に、「美味しい」という事を規定するのは非常に難しい事であるのですが、文学的な表現をすれば、上記の様になろうかと思います。


 まず、それほど美味しくないご飯の食感をあげてみると、こんな感じであろうと思います。

  • 芯があるご飯
     水に浸ける時間が短かった、火力が弱かった、逆に強すぎた、炊飯時間が短かった、こういう場合になります。書いて字のごとく、固かったり粉っぽい芯が残ったご飯で、炊き損じの代表格です。

  • べたべたのご飯
     水に浸けすぎた、水の量が多かった、火力が弱くて炊きあがりに時間がかかった、こういう場合になります。芯飯に比べればマシですが、ご飯を食べる楽しみが減退します。

  • なんかモソっとしたご飯
     沸騰までに時間が掛かった割には、弱火で重湯が引く時間が短かった場合に多いです。芯飯になりかけたのが辛うじてならなかった感じです。

  • 焦げ飯
     火力が強すぎた時は言うに及ばず、弱火でも火にかけている時間が長いと焦げます。底が炭化した時は、飯がまずいだけでなく、飯盒の後始末も大変です。

 

 では、美味しいご飯というのは、どういうものか。様々な表現がありますが、こんな感じであろうと思います。

  • ふっくらしている
  • 米が立っている(べたべたしていない)
  • 米独自の香りがし、噛むほどに味が増す(オカズいらないほど)

 昔の人は、一汁一菜といって、オカズはほとんど食べずご飯ばっかり食べていた、という話しがありますが、焚き火で炊いた美味しいご飯を食べてみると、欲しくなるのは沢庵や梅干しといった漬け物や、メザシといった焼き魚、みそ汁、果ては塩や醤油、味噌といった、いわゆる一汁一菜のおかずが欲しくなります。昔の人は、カマドで薪を焚いて、お釜でご飯を炊いていた訳ですが、お釜も下半分に火が当たる構造ですし、焚き火で炊いたご飯は唸るほど美味くて、大したオカズが要らなかったのではないか、と思うのです。